均斉のとれた帆布のなかであばれていたわたしたちは
濡れた影にすがりつくかれらの呼び声をきいて
荊棘に抱きしめられた敵の魂を驟雨のように浴びせかかる
わたしだけがここにいる
陽射しで力づよく肥った果実は溺死者の涙で腐り落ちながら
ひとつの種だけは暴かれずそこに眠る
金色の安らぎが如雨露のように水をやり
わたしだけが海のなかで芽吹く祈りを信じている
甘い波濤がわれらの耳朶を打ちつけながら
冷やしがたい心臓の熾火が微笑みながら友の血管へ巡るのを感じる
見出した心から喜びと哀しみを腑分けしていく
わたしたちだけは息を継いでいる
松明のバトンをお守りのように手渡され
けして消させまいと泳ぎながらその白い腕を捧げる
泳ぐ炎は暗く輝いた鴉の群れた空をことごとく透かしはじめ
わたしたちは生きている