運動靴で地面をけずり
ざらつく藪をかき分ける
深い森は夕暮れの水面を映し
のぞいた肌には傷が浮きあがる
それでも欲しいものがある
池のほとりに声を浴びせ
根を張った木々と語らう
きれいな靴はいつのまにか泥んこになって
土足で禁足地を踏みしだく
それでも欲しいものがある
墨をこぼした夜に包まれ
神社の境内へたどりつく
おもむろに鈴の音を縄で揺らしても
なにを願ったか思い出せない
それでも欲しいものがある
他所の家と間違わないように
束ねた鍵で鍵穴を試す
にしても扉は黙りこくったまま
やがて鍵穴嵌まるとき
落とし物は見つかった?