Idle mode

Reminder / ToDo

春影

 粒だった光の波が樹かげで身を寄せ合うのを
 立ちつくしたわたしの影は鋭くさえぎる
 ひときわ濃い影が鏡のように立ちはだかり
 暗い輝きで光のなかをひれ(・・)のように泳がせる

 甘やかな午後は隔てなく草花をいつくしみ
 深い森は葉むらを揺らしながらせせらぐ
 春のきざしはやがて小さな(つぶて)になって
 光の矢に乗ってさまざまな形の影をつらぬく

 立ちつくしたわたしの影も例に漏れなく
 右手 左手 両足とはりつけにされる
 やがて影はぐらぐら重心をくずし
 案山子(かかし)のようにばたんと倒れた

 そこでわたしは影に向かって寝っ転がった!
 影は倒れたわたしの肌を縫うように触れてきて
 慎み深い春のしとねが微睡みをくすぐり
 わたしはうとうと眠り込んだ